名古屋の運送業界に新たな風 - 規制強化の流れを好機に変える運送会社の挑戦
トラック運送業界に大きな変革の波が押し寄せています。自民党を含む超党派の国会議員が、トラック運送業の規制を強化する法案を今国会に提出する方針を固めました。原価割れ運賃の制限や免許の5年更新制の導入など、これまでの「過当競争」からの脱却を目指す内容です。
名古屋市港区に拠点を置く早紀NESSは、このような業界変革の流れを「ピンチではなくチャンス」と捉えています。創業間もない当社が、規制強化の潮流をどのように事業発展の好機として活かそうとしているのか、その取り組みについてご紹介します。

法案の要点と名古屋の運送業界への影響
規制強化の内容と背景
今回の法案の主なポイントは「原価割れ運賃の制限」「免許の5年更新制」「下請け再委託の制限(2回以内)」などです。
これは1990年の規制緩和後、30年以上続いた価格競争による業界の疲弊に歯止めをかける狙いがあります。
特に名古屋の運送業界は、自動車関連を中心とする製造業の集積地であることから、ジャストインタイム納品の要請も強く、厳しい価格競争と時間的プレッシャーの両方に直面してきました。法案成立による規制強化は、こうした状況に一石を投じることになりそうです。
名古屋の運送会社の反応
この動きに対する名古屋の運送業界の反応は様々です。長年の価格競争に疲れ、「ようやく適正な運賃で仕事ができる環境が整う」と歓迎する声がある一方、「免許更新の手続きが煩雑になる」「急に原価計算を求められても対応できない」といった不安の声も聞かれます。
早紀NESSでは「この法案は、私たちのような『質』にこだわる運送会社にとっては追い風になる」と捉えています。
なぜなら、これまで原価を割り込むような価格競争を仕掛けてくる競合相手が減り、サービス品質による差別化が評価される環境が整うからです。
早紀NESSの適正価格戦略
原価に基づく価格設定
早紀NESSでは創業当初から、「どんぶり勘定」ではなく、燃料費・人件費・車両維持費などを詳細に積み上げた原価計算に基づく価格設定を行ってきました。これは今回の法案が目指す「適正な原価を下回らない運賃」の考え方と一致します。
具体的には、各コース・各荷物ごとの走行距離、作業時間、車両種別などを分析し、適正な利益率を確保できる価格設定を心がけています。この取り組みは、法律による規制強化を先取りしたものと言えるでしょう。
顧客との価値共創
単に「法律だから値上げします」というアプローチではなく、運送サービスの価値をしっかり伝え、顧客と共に創っていく「価値共創」の姿勢も大切にしています。例えば、「音を立てない荷扱い」や「時間厳守の配送」など、当社ならではの品質基準を明確に示し、それに見合った対価をいただく関係構築を目指しています。
名古屋の製造業のお客様には特に品質へのこだわりを持つ企業が多く、「安かろう悪かろう」ではなく、適正な価格で確かな品質を提供する当社の姿勢に共感いただけるケースが増えています。
規制強化時代を生き抜く組織づくり
5年後も更新できる体制づくり
法案では、これまで一度取得すれば更新不要だった運送業の許可が、5年ごとの更新制に変わります。更新時には安全基準や運転手の処遇状況なども審査されるため、継続的なコンプライアンス体制の構築が不可欠です。
早紀NESSでは、デジタルタコグラフの導入や安全運転研修の実施など、安全管理体制の整備を進めています。また、完全週休2日制や夏季の熱中症対策など、運転手の労働環境改善にも取り組んでいます。こうした取り組みは、5年後の更新審査を見据えたものでもあります。
多重下請け構造からの脱却
法案では下請けへの再委託回数を「2回以内」とする努力義務も盛り込まれています。これは多重下請け構造の中で、末端の運送会社がコストを押し付けられるという業界の悪弊に対する是正措置です。
人材戦略の転換
処遇改善による人材確保
トラック運転手の人手不足は深刻で、このまま対策が取られなければ、2030年度には需要に対して供給力が34%不足すると予測されています。この危機に対応するため、早紀NESSでは運転手の処遇改善を経営の最重要課題の一つと位置づけています。
具体的には、完全週休2日制の導入、有給休暇の取得促進、そして10年勤続者への特別手当(100万円)の支給など、長期的なキャリア形成を支援する制度を整備しています。これらの取り組みは、法案が目指す「運転手の適切な処遇」にも合致するものです。
未経験者の育成強化
規制強化により業界の淘汰が進む中、経験豊富なドライバーの確保はますます難しくなることが予想されます。そこで早紀NESSでは、未経験者の採用と育成に特に力を入れています。
「バディサポート制度」という、新人一人に対して先輩一人がマンツーマンで指導する仕組みを導入し、未経験者でも安心してキャリアをスタートできる環境を整えています。この制度により、約9割の社員が未経験からのスタートながら、短期間で一人前のドライバーとして活躍できるようになっています。
Q&A
-
規制強化で運賃は上がるのでしょうか?また荷主の理解は得られるのでしょうか?
-
法案成立により、原価割れ運賃での継続的な輸送が制限されるため、全体的な運賃水準の適正化が進むと考えられます。荷主企業には、「安全な輸送」「安定した物流」の維持には適正な対価が必要であることを丁寧に説明し、理解を求めていくことが重要です。早紀NESSでは、単なる値上げではなく、提供するサービスの価値をしっかりと伝える姿勢を大切にしています。
-
規制強化により、中小の運送会社は生き残れるのでしょうか?
-
確かに一部の事業者にとっては厳しい状況となりますが、これは業界全体の健全化には必要なプロセスだと考えています。早紀NESSのような中小企業でも、「原価に基づく適正な価格設定」「運転手の処遇改善」「安全管理の徹底」といった基本を押さえることで、むしろ規制強化を好機として成長することも可能です。何より大切なのは、変化を恐れず、前向きに対応する姿勢ではないでしょうか。
-
名古屋の運送業界の将来展望はどうなりますか?
-
名古屋は製造業の集積地として物流の重要拠点であり続けますが、その在り方は大きく変わっていくでしょう。価格だけでなく、品質や安全性、環境対応などの価値が評価される市場へと変化していくと予想しています。早紀NESSは名古屋市港区を拠点に、こうした変化を積極的に取り入れながら、地域の物流を支える企業として成長していきたいと考えています。
まとめ
トラック運送業の規制強化という大きな変革の波は、名古屋の運送業界にも確実に押し寄せています。この変化を恐れるのではなく、むしろ業界が健全化し、適正な対価で質の高いサービスが評価される好機と捉えることが重要です。
早紀NESSは「自分らしく前向きに生きる」という社是のもと、規制強化の時代においても「美心挑戦」の精神で新たな物流の形を創造していきます。原価に基づく適正な価格設定、運転手の処遇改善、安全管理の徹底——こうした基本を大切にしながら、名古屋の物流を支える企業として、着実に歩みを進めていきたいと考えています。